■障害福祉サービス事業所におけるカスタマーハラスメント対策について
こんにちは。行政書士浅井事務所の浅井順と申します。本日は、令和8年10月1日からのカスタマーハラスメント対策の義務化について、必要な取り組みをお伝え致します。
令和8年10月1日から、改正労働施策総合推進法・指針により、事業主にはカスタマーハラスメント対策を講じる義務が課されます。
厚労省資料では、カスタマーハラスメントとは、1.顧客等の言動で、2.業務の性質等に照らして社会通念上許容される範囲を超え、3.労働者の就業環境を害するものをいうとされ、電話やSNS上の行為も含まれます。福祉施設の利用者や家族等も「顧客等」に含まれます。
https://www.mhlw.go.jp/content/001662629.pdf
障害福祉の現場では、利用者支援の継続が生活や生命に直結しやすく、一般企業よりも「毅然と対応しにくい」という特徴があります。また、利用者本人だけでなく、家族からの執拗な苦情や理不尽な要求も起こりやすいため、職員個人に任せず、事前予防・初動対応・事後対応の3段階で、事業所全体として備えることが重要です。
まず事前予防として、事業所は基本方針の明文化と周知を行う必要があります。
厚労省資料では、カスハラには毅然と対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、周知・啓発することが求められています。加えて、カスハラの内容や、発生時にどう対処するかをあらかじめ定め、職員へ周知する必要があります。下記URLの資料でも、実態把握、事業者の基本方針・基本姿勢の周知、相談体制整備、マニュアル作成、教育研修が「事前予防」として示されています。
https://www.city.sendai.jp/shogaishien-shido/jigyosha/fukushi/fukushi/shogai/shidokansa/documents/05_r702.pdf
実務上は、少なくとも次の整備が必要です。
1.方針書の作成(暴言、威圧、継続的な苦情、セクハラ、身体的攻撃、不当要求等を許容しないことを明記)
2.相談窓口の設置(管理者、サービス管理責任者、法人本部等)
3.対応マニュアルの作成(事前防止・初動対応・事後対応ごとに手順化)
4.職員研修の実施(定義、具体例、記録方法、声かけ、退出判断、警察・弁護士相談基準など)
5.利用者・家族への周知(方針書、マニュアル、重要事項説明書、掲示物、契約時説明等)です。
次に初動対応です。厚労省資料では、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者への配慮や再発防止措置を講ずることが必要とされています。他資料でも、まず事実内容を収集して判断し、緊急性がある場合は安全最優先、できるだけ複数人で対応し、単独対応に備えて記録を残せる環境を整えること、必要に応じて警察や弁護士へ相談することが示されています。
そのため事業所では、現場職員を一人で抱え込ませない運用が重要です。暴言や威圧が始まった場合の報告ルート、複数対応への切替基準、面談記録・苦情記録・事故報告書の様式、訪問系サービスでの同行・中断・退避ルールを決めておくべきです。特に身体的被害や強い威圧がある場合は、安全確保を最優先にし、必要時は警察通報も想定しておく必要があります。
さらに事後対応として、被害を受けた職員への継続的配慮、対応者変更、業務調整、メンタルヘルス相談、再発防止策の検討、マニュアル見直し、継続研修が必要です。相談者のプライバシー保護と、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止も、法的に講ずべき措置として明示されています。
なお、対策を進める際は、消費者の権利や、障害者差別解消法における不当な差別的取扱いの禁止・合理的配慮の提供義務にも留意が必要です。つまり、正当な苦情や合理的配慮の申出まで一律に「カスハラ」と扱わず、区別して運用することが大切です。
以上、ご参考になりましたら幸いです。
最後までのお読みいただき、本当にありがとうございました。
今回の内容が少しでも事業所運営に役立ちましたら幸いです。
今日も一日皆様にとって素晴らしい日となりますように。
