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就労継続支援事業所における生産活動の種類や選定について

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■就労継続支援事業所における生産活動の種類や選定について

こんにちは。行政書士浅井事務所の浅井順です。
本日は、就労継続支援事業所における生産活動の種類や選定についてお伝え致します。

生産活動には、「必ずこうしなければいけない」という決まりは特にありませんが、利用者に仕事をしてもらって、その対価として賃金や工賃を払うので、市場で需要のある商品やサービスでないと、事業として継続ができなくなります。

それでは、就労継続支援事業所の生産活動は、どのように選べばよいのでしょうか?
1.生産活動の種類
主なものとして以下のものがあります。
・食品製造
・服飾雑貨・インテリア雑貨等の製造
・飲食業
・農業
・清掃
・軽作業
などが全国の就労継続支援事業所で多く行われております。

そのうち、清掃や農業、軽作業については施設外就労、受注作業等の労務系の仕事は、設備投資が不要で、材料費もかからず、効率よく工賃に還元できる活動です。
ただし、発注する企業等の都合により、受注単価や受注量が決まるため、利用者に安定した仕事を提供することが難しいという問題もあります。

焼き菓子・パン・弁当等の食品製造、織物・アクセサリー・石鹸等の製造・販売等、製造から販売までを事業所で行う製造小売の生産活動も、多くの事業所が取り組んでいます。

2.生産活動の選定理由
事業所がその生産活動を選ぶ際、以下の理由で選択することが多いです。
・利用者の希望
・誰もが取り組みやすい
・材料を無償で手には入れることができる
上記は、利用者の能力に見合うことや地域の特性を生かせるなど、福祉的な活動の一環という理由で選択されることが多いです。
ただ、地域との関係性から始めた場合や、補助金をもらって設備を導入した場合には、簡単にやめることができないというケースもよくあります。

3.おすすめの生産活動の3つの選定基準
生産活動を選定する際は、以下の3つの基準から検討頂くことをお勧めします。

(1)収益性
利用者のそれぞれの特性をふまえながら、どうすれば賃金や工賃を上げていけるかを考えて生産活動を選定することは支援者の重要な役割です。
生産活動を継続するためには、賃金や工賃、事業の採算性(収益性)が満たせるかということは、事業選択の1番の基準となります。

例えば利用者に人気がある仕事であったとしても、利用者の特性に合っておらず、採算割れが続いてしまったり、単価の低い簡単な作業を中心に生産活動をしている場合、どんなに頑張っても工賃が低く、利用者のモチベーションアップにつながらず、工賃向上に苦労している事業所も多くあります。

そこで労務系の仕事であれば、事業所内で行う内職よりも受注額が高いケースも多いため、施設外就労の導入も選択の一つとして、どうすればできる体制にできるか考えることも大切です。

(2)ターゲットや販売方法が具体的に想定できること
自主製品を生産している事業所の多くは、地域での福祉イベント等での販売を想定していることが多いです。
ただ、ターゲットをそこだけに絞ってしまうと売り上げの拡大は難しくなってしまいます。
そこで、地域の企業・団体への訪問販売や注文販売、地域住民向けの販売機会の創出、地域の小売店への卸販売や委託販売等、日常的に繰り返し販売できる方法がないかを考え、生産活動を組み立てることも重要です。

(3)事業も人(利用者・支援者)も成長する将来を想像できること
利用者の能力は今がピークではなく、機会を提供することによって開発できるという考え方で事業を選択します。
個々の利用者によって得意、不得意があると思いますが、チームで取り組むことで十分な成果を上げられる可能性もあります。
例えば、難しい仕事や手間ひまがかかるモノづくりは、利用者には難しいとあきらめてしまうこともあるかもしれませんが、もし高品質な製品を提供できた場合、高い付加価値により高収益を望める場合もあります。そうすると(1)の収益性にもつながってきます。
高付加価値なものを提供できるようになる将来を想像し、そこから職域開発⇒工程の分解⇒適材適所の配置⇒訓練と習熟を目指すことで、「収益性」と「やりがい」の両方を実現することも決して不可能ではないでしょう。

4.上記の選定基準をもとに生産活動を選定した事業所の事例
全国には、社会課題や地域のニーズにこたえ、必要とされる仕事を生産活動として選定選択し、挑戦している多くの事業所があります。
例えば
・人手不足で廃業した地域の小売店の跡を継いで運営している事業所
・伝統工芸の担い手が高齢化し、その一部の工程を請け負って協働している事業所
・365日体制で倉庫内作業を行い、物流の一翼を担っている事業所
等があります。
地域の課題等、周囲に目を向け、地域の情報を収集し、これまで福祉事業所で取り組んでこなかった新しい事業機会に目を向けることも重要です。

5.生産活動選定の際に注意すること
1つの事業所で取り組む生産活動は2,3業種に絞るとよいでしょう。
理由
・事業所のリソース(人、お金、設備等)を有効に使うことができる
沢山の事業に取り組むと、人や設備や予算が分散してしまいます。
集中することで、その業務への成熟度を高めていくことができます。
・多数の工程を作ることで、利用者の分業体制が作りやすい
事業を集約し、拡大を図ることで、生産過程に多くの工程を設定することができます。
そうするとその工程の中で利用者の特性に応じて取り組める業務を作ることができます。
・マネジメントの効率化ができる
生産活動が増えると、その分だけ生産管理、販売管理、収支計算等の作業が増えてしまいます。生産活動を絞ることで、製品の品質担保や目標とする工賃・賃金を確保するための改善や対策を進めやすくなります。

○まとめ
人も事業も成長できる事業のヒントは地域にあると考え、今できることだけで考えるのではなく、「収益性とやりがいのある生産活動」という将来像を思い描いて、生産活動を選択することをお勧めいたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今日も一日皆様にとって素晴らしい日となりますように。

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