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障害者雇用における合理的配慮について

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■障害者雇用における合理的配慮について

こんにちは。行政書士浅井事務所の浅井順です。
本日は、障害者雇用における合理的配慮についてお伝え致します。

1.合理的配慮とは
障がい福祉サービス事業に関わっていると、合理的配慮という言葉を耳にしたことがあると思います。しかし、どういうことかうまく説明できないと言う方も少なくないでしょう。合理的配慮という言葉が意味する範囲は広いですが、ここでは障害者雇用における合理的配慮についてお伝え致します。

配慮について考えるとき、平等と公平の違いについて考えるとわかりやすくなります。
例えば、3人の兄弟で映画を観に行ったとします。長男のお兄さんは、身長が高いので、その映画を観ることができますが、三男の背の低い弟は、前の座席が高くて映画を観ることができません。次男の弟もかなり観るのが困難な状態です。これは配慮がない状態です。
どうしたら3人が同じように映画を観ることができるでしょうか?
そこで長男が座高を高くするシートを2人に渡しました。それで次男は何とか観られるようになりました。しかしそれでも三男の弟はまだ映画を観ることができません。
ここでは、下の兄弟二人へ平等に配慮するだけでは、充分でないケースがあるわけです。
そこで長男がさらにもう一つ、座高が高くなるシートを三男の弟に渡しました。そうすると三男も観ることができ、映画を楽しむことができました。
身長差という個々の事情をふまえて、公平な配慮をしたことで、3人共観ることができるようになったわけです。
三男は次男より多くのシートを使うことになりましたが、それを持ってずるいという人はいないでしょう。
この身長差の例え話を、障がいの特性に置き換えて考えてみましょう。
身長は一人一人がもつ異なる障害特性と置き換えます。
この障害特性をふまえて、公平な配慮を行うことが合理的配慮といいます。
障がいがある方が、生活を送る上で直面する困り事、つまり壁やバリアのようなものを取り除く、あるいは軽減するために必要な改善や調整をすることを、合理的配慮といいます。

2.合理的配慮と法律
法律においては、障害の有無に関係なく基本的人権を尊重することを定めた2016年施行の障害者差別解消法、さらに同じ年に改正された障害者雇用促進法において、合理的配慮の概念が明記されました。
従来の心や体の障害を個人の努力や訓練で克服すると言う考え方から、障害者も含めた多様性に対応できる社会になっていないことが障害であるという考え方へ移行し、互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる社会、すなわち共生社会の実現を目指すことが、法律によっても後押しされています。ただし、障害者雇用において合理的配慮が必要な場合は、本人が必要とする配慮であると言う視点が重視されるため、原則として本人からの申し出がスタートとなります。
どんな場面でどんな配慮が必要になるかは、一人ひとりの特性や困り事によって異なるので、本人と話し合いながら配慮の内容や方法を決めていくことが大切です。

3.合理的配慮の進め方
合理的配慮の進め方はケースによって異なりますが、(1)相談、ヒアリング(2)話し合い、合意形成(3)実施(4)振り返り・改善と言う流れをたどることが基本です。

〇障害者雇用における相談ヒアリング
本人やご家族、そして支援者から配慮を求める事項を確認すること、また働く上での支障の有無や程度を確認することを指します。
〇話し合い、合意形成
本人と企業でどんな配慮ができるか話し合い、検討して、合意事項を形成します
〇実施
合意事項に基づいて、実習や就業の中で実行に移します。
〇振り返り・改善
実施したことを振り返り、改善点があれば見直します。

支援者としては、ヒアリングで配慮を求める事項をきちんと把握し、その配慮事項を企業に明確に伝え、具体的にどんな配慮ができるのか検討し、合意形成につなげていくことが大切な役割となります。

2015年政府が発表した基本方針によれば、合理的配慮を考える上で、次の点に留意しなければならないとされています。
(1)必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られる
(2)障害者でないものとの比較において、同等の機会の提供を受けるためのものである
(3)事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばない

合理的配慮に係る措置が、企業に過度な負担となる場合には、合理的配慮を提供する義務はないとされています。障害物をなくすために壁を撤去するなど、大掛かりなことまではする必要はありません。

支援者は、障害者雇用の場面においては、障害がある方と雇用主の間に立って、合理的配慮の合理性を見出してしていくことが求められます。合理的配慮の必要性は、あくまで障害のある本人からの申し出が必要ですが、障害のある方は、合意形成の場面などで、希望を伝えることが難しい場合があります。そのため支援者は、本人の特性や状況を理解し、必要な場合は聞き取りや観察を行って希望を整理したり、場合によっては企業との話し合いに同席したりすることが求められます。その際、一方的な主張とならないよう、双方の利益につながるようにバランスを取りながら、どちらの信頼も得ていくことが大切です。

4.まとめ
障害者雇用における合理的配慮とは、本人の障害特性を踏まえて公正な配慮を行うことです。
ただし、合理的配慮は押し付けのものであってならず、本人が必要とし、申し出た場合に限り、内容や方法を検討します。とはいえ、本人が希望をまとめ表出することが難しいこともあり、その場合は支援者がサポートします。
なお合理的配慮は過度なものであってはならず、関係者すべての利益につながるよう、バランスを取りながら、内容や方法を決めていく必要があります。
障害者雇用の場面では、ちょっとしたボタンの掛け違いで、トラブルに発展してしまうことがあります。法律理解も必要ですが、最も大切なのは本人の特性を理解し、本人の気持ちになって考えることです。合理的配慮は皆と同じスタートラインに立ってもらうための配慮であり、それがうまくいけばその後の支援もやりやすくなります。適切な合理的配慮にたどり着くことで、トラブルの予防だけでなく、働きやすい環境作りにもつながります。

以上、参考になりましたら幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今日も一日皆様にとって素晴らしい日となりますように。

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